日本国憲法を改正しようという議論が盛んです。提案されている改正がどのような法的な意味を持つか (持たないか)も問題ですが、この講義ではそうしたホットな議論から少し距離をとって、憲法改正論議 の背景にある、日本という国の自己イメージ(の不安定さ)について考える材料をみなさんに提供しよう と思います。憲法を変えたいと思う人は、現在の憲法に示された国のすがたに違和感を抱く人たち、それとは異なる日本のイメージに共感を覚える人たちのはずです。

人に人柄があるように、国にも国柄があります(そのイメージも人それぞれですが)。日本の国柄は過去、 どのようなものだったのか。現在の日本の国柄はどのようなものか。それを考えるきっかけをこの講義か ら見つけて下さい。

憲法学から見た国家

第1回 10/10 憲法から見た国家

第12回 1/16 戦争する国家

第13回 1/23 憲法9条および96条をめぐる諸問題

長谷部恭男(法学部)

国家は戦争をします。外交交渉をしたり、条約を結んだりします。国民から税金をとり、警察や司法などのサービスを提供し ます。国家とは何なのか、何のために、どのような範囲で行動すべきなのか。国家の行動を憲法でしばることにどのような意味があるのか。憲法学の観点から考えます。

「憲法」は変えることができるか?

第2回 10/17 「憲法」は変えることができるか?─古代アテネの場合─

葛西康徳(文学部)

「国家」や「政治」をめぐる現代の議論において、古代ギリシア(特にアテネ)がしばしば言及されます。それは、「国家」や 「政治」に相当するギリシア語がある(と思われている)からです。しかし、古代ギリシアに「憲法」や「法律」があったのかどうか?確かに、「法律」と一応訳される「ノモス(複数ノモイ)」という言葉があり、デモステネスの『法廷弁論集』やプラトンの大作『法律(ノモイ)』があります。紀元前350年頃にタイムスリップして、一緒に考えましょう。

日本の思想と憲法

第3回  10/24 皇室制度をめぐって

第4回  10/31 戦後の平和思想と憲法

苅部 直(法学部)

憲法をはじめとする法秩序は、その国、その時代に人々が政治についてどう考えていたか、またいかなる思想伝統のもとに生きているかという事情と、深く関係しています。ここでは上記の二つのテーマに即して、この問題を考えます。

刑法学から見た国家

第5回  11/7 刑法が保護する国家

第6回  11/14 刑罰を科す国家

佐伯仁志(法学部)

刑法学から見た日本という国の姿について、2つの観点から考えてみたいと思います。第1は、刑法が守ろうとしている国の姿です。第2は、刑法を適用して実際に個人に刑罰を科す場面で現れる国の姿です。

戦争の歴史から国家を見る

第7回 11/28 日清戦争研究の現在

第11回 1/9 日露戦争研究の現在

加藤陽子(文学部)

歴史学においては、周年記念を意識した、世界的な規模での学術交流がなされることで、研究水準が一挙に上がることがあります。1995年前後における日清戦争研究、2005年前後における日露戦争研究がそれに相当します。戦争への理解を深めることで、国民と国家の自己イメージを再考したいと思います。

戦後日本社会と自己イメージの再定義

第8回  12/5 お茶の間のなかの「ニッポン」-アメリカのまなざしの下で-

第9回  12/12 焼け野原からの構想力

吉見俊哉(情報学環)

ここでは、戦後日本社会が自らの国のイメージについてどのような再定義を試み、またそれが挫折したり、変質したりしながら、高度経済成長の頃までにある「ニッポン」のすがたがほとんどの家庭に広く受容・消費されるに至ったのかを検討します。

憲法の運用と「この国のかたち」

第10回 12/19 憲法の運用と「この国のかたち」

宍戸常寿(法学部)

憲法とは、「日本国憲法」という名前のテクストだけではありません。このテクストを政治家や法律家がどのように運用し、 また国民やメディアがどのように理解するか。それによって、憲法は豊かに発展させることも、また貧しい意義しかもたないものともなりえます。こうした問題を、アメリカやドイツの例を取り上げながら考えてみることにします。