生き物はとても精妙にできている。例えば昆虫など、どうしてあんな小さいものが、あんな精密な動きをするのか、不思議である。あまりに精巧にできているように見えるので、しばしば人は、その背景に神のような超絶したものを想定したいという衝動に駆られるものだ。でも本当にそうだろうか。今地球上にあるこれらの存在に満足して良いのだろうか。生き物はそんなに良くできているのだろうか。理想的な生命とは、もっとずっとよくできたものではないのだろうか。またそうだとすれば、それは設計し直したりできないのだろうか。偶然という要素に大きく支配されて進化してきた生き物の本当の姿と、それを扱う生物学の考え方を紹介する。

講義には、宇宙物理学の専門家(自称)かつ生物に関しては全くの素人(他称)である須藤靖教授が「インターラプター」として登場する。彼が疑問に思ったことは、文字通り講義の途中でインタラプトして講師に質問し議論をする。学生のみなさんもぜひ積極的にインターラプトして議論してほしい。

各講義概要 第1回 – 第13回

TAレポート にはTeaching Assistant学生による講義レポートがあります。

生き物の設計図はつぎはぎだらけ

塚谷裕一(理学部) 

生き物はとても良くできていると言うけれど、偶然の積み重ねでできた結果はというと、実はこんなありさま。全13回の一連の講義を聴いたあとは、そういうふうに人に説明できるようになろう。そんな心構えについて、概略を説明し、全体の導入とする。

第1回

4月13日(水) 生き物の設計図はつぎはぎだらけ
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死体の偶発史

遠藤秀紀(総合研究博物館) 

死体は私の問いに悲鳴をあげる。生き物がなぜそのかたちをもって生きなければならないかを考えるとき、頼れるのは死体に立ち向かう自分の五感のみだ。死体から私が見、私が感じ、私が解く生き物のかたちは、場当たり的に地球を生き抜いた彼らの履歴を、恥ずかしげもなく私に曝す。

第2回

4月20日(水) 躍動する命
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第3回

4月27日(水) 捻じ曲げられるからだ
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進化は進歩か?

森長真一(教養学部) 

塚谷裕一(理学部) 

進化とは、必ずしも優れたものだけが生き残る過程ではない。自然選択がもたらす必然的な進化と遺伝的浮動がもたらす偶然による進化を中心に、生物の適応とそれを制限する様々な要因について紹介したい。

第4回

5月11日(水)  進化は進歩か?:自然選択と遺伝的浮動が織りなす生物史
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共生による生物進化

深津武馬(産業技術総合研究所) 

多くの生物は、体や細胞のなかに特別な微生物をすまわせている。宿主の生物はそういった微生物のパートナーなしでは生きていけなかったり,微生物により性質が変わったりする。両者が1つの生物のように振る舞う場合も少なくない。共生関係からどんな新しい生物機能や現象があらわれるのか?共に生きることの意義と代償はなにか?個と個、自己と非自己が融け合うときになにが起こるのか? 共生と生物進化の関わりについて、基本的な概念から最新の知見まで、偶然か必然かという視点の対立を交えながらわかりやすく紹介する。

第5回

5月18日(水) 共生、進化、生物多様性
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第6回

5月25日(水) 昆虫と微生物の内部共生:運命共同体となる仕組み
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第7回

6月1日(水) 生物進化における偶然と必然:討論 vs斎藤成也(国立遺伝学研究所)
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免疫とは、そして免疫によって起こる病気とは

山本一彦(医学部) 

我々の体が微生物などの外敵から守られているのは免疫システムがあるからだ。免疫システムは、未だに遭遇したことのない無数の外敵を認識し自分の体を守ることができるすごいシステムである。しかし、それは万全ではない。どうして免疫で病気になるのだろうか。本俯瞰講義のテーマ「偶然」は進化だけでない。病気の成り立ちに潜む必然と偶然を垣間見よう。

第8回

6月8日(水) 免疫とは、そして免疫によって起こる病気とは
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植物の<見かけ>はどう決まる

塚谷裕一(理学部) 

植物について、まずは自然界での進化の結果を紹介する。そのあとで、今度はヒトが選んできた植物=作物や園芸植物=がいかに奇怪かを紹介する。

第9回

6月15日(水) 植物の<見かけ>はどう決まる:ヒトが選んだ姿
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第10回

6月22日(水) 植物の<見かけ>はどう決まる:できあがってしまった姿
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医学研究における「偶然と必然」

永井良三(医学部) 

医学研究の中心は生命や病気の必然性の解明である。しかしながら、その成果に基づいて開発された治療法が、誤っていることも多い。そのため生老病死の分析には、統計的な解析が必要である。講義では、医学の歴史を踏まえて、メカニズムの理解と統計的な考え方がどのように成立したか、またこれからの医学研究のあり方について解説する。

第11回

6月29日(水) 医学研究における「偶然と必然」
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コンピュータを利用した新しい生物進化の始まり

豊田哲郎(理化学研究所) 

生命の本質は情報である。コピーと選択を繰り返して進化し続ける遺伝情報が生命の本流であり、「利己的な遺伝子」とも呼ばれる。約38億年の間、遺伝情報はRNAやDNAなど物質の世界だけでコピーと選択を繰り返し、進化してきた。近年のゲノム科学の技術革命の結果、遺伝情報はデータベース上でもコピーと選択が可能になり、生命進化の場が情報世界にまで広がっている。情報世界で有用な遺伝子を選び、ふたたびDNAに合成して物質として生物に戻すことで、有用な生物資源が新たに創造されつつある。この新しい進化のサイクルが未来をどう変えていくのを考察する。

第12回

7月6日(水) 「超・利己的な遺伝子」を生み出したゲノム科学
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第13回

7月13日(水) コンピュータを利用した新しい進化の始まり
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