「いのち(生命)」とは何だろう。現在の地球には何百万もの種があり、そのうちの1つの種であるヒトだけで67億の生命がある。土壌や海中の細菌にいたっては、その個体数だけでなく種数も計測不可能なほど多い。私たちヒトは、ヒトの誕生以来、生活の必要性からまた知的好奇心から、この多様な生命を理解しようと努めてきた。歴史的にみると、これまでに生命の理解が飛躍的に進んだ時期がいくつかある。1990年代後半からの現在に至る10数年も、まさにそのような時期で、新たな知識に基づいて生命観も大きく変わりつつある。この変化の大きな潮流をつくったのは、生命の設計図であるゲノムを構成する全塩基配列の解読と生命を生きた状態で観察するイメージングの進展である。

本講義では、これらの新しい技術・情報により急展開しつつある生命の理解を、3つの階層”ゲノムシステム、細胞システム、高次生命システムの代表としての脳”から俯瞰する。

各講義概要 第1回 – 第13回

TAレポート にはTeaching Assistant学生による講義レポートがあります。

「いのち」のシステムの本質は多様性にあるー物理学のシステムと異なる特異性

塚谷 裕一(理学部) 分子生物学から分類学までこなす植物科学の異能研究者

物理学をかじった人がよく陥る落とし穴がある。万物は単一の、美しい理論から自然と生まれてくるものだ、という誤解だ。生命も所詮そんなものだ、全て1つの共通原理で動くに違いないと、不遜な態度で生命科学に臨んだ物理学者はことごとく隘路にはまっていった。生命は高い共通性を持つと共に非常に多様である。多様性の原点は突然変異と自然選択である。それを許容するシステムだからこそ、脳のような高次なシステムができたのだった。またその一方で、思いもかけない欠陥を抱える存在ともなったのである。その共通理解をこの講義の出発点としたい。

第1回

4月8日(水)「いのち」のシステムの本質は多様性にある ?物理学のシステムと異なる特異性

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ゲノム、情報、進化

高木利久(情報・システム研究機構) バイオインフォマティクスの先駆者

森下真一(新領域創成科学) ゲノム情報解読の第一人者

斎藤成也(国立遺伝学研究所) ゲノム人類進化学の世界的研究者

ある生物がもっている遺伝情報の総体をゲノムという。さまざまな生物のゲノムを読み解くことによって、新たな生命像が明らかになってきた。また、人類に至る進化や日本人の起源についてもいろいろなことが分かってきた。一方、ゲノムは膨大なデジタル情報でこれを読み解くには大規模なコンピュー解析が必要である。講義では、ゲノム研究に必要なコンピュータの技術はどういうものか、生命の仕組みや進化についてこれまで何が分かったのか、これからどういう方向に研究は進むのかを分かりやすく紹介する。

第2回

4月15日(水)ゲノムとコンピュータ (森下)

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第3回

4月22日(水)ゲノムと進化 ?人類への道 (森下・斎藤)

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第4回

5月1日(金)ゲノムから読み解く日本人の起源 (斎藤)

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第5回

5月13日(水)ゲノムから生命システムの理解へ (高木)

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細胞情報システム

宮園浩平(医学部) がん研究をリードする世界的リーダー

ここではゲノム研究(第2~5回講義)の流れを受け、ゲノムから発信される遺伝情報の細胞内での流れとしくみについて概論する。最初に核内での情報伝達システム、次に細胞外からの刺激による情報伝達のしくみについて述べる。続いて、その仕組みの破綻と疾患について癌や骨粗鬆症を例に紹介する。

第7回

5月27日(水)シグナル伝達 ?細胞膜受容体から薬まで (宮園)

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第9回

6月10日(水)がんのバイオロジー ?がんの広がりと転移 (宮園)

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高次生命システムとしての脳

坂野仁(理学部) 脳研究にチャレンジする分子免疫学者

河西春郎(医学部) ライブにこだわる世界的細胞生物学者

堀田凱樹(名誉教授、情報・システム研究機構長) 脳研究の先駆的分子遺伝学者

脳の解析には伝統的に解剖学と生理学のアプローチが取られてきた。また最近では分子生物学の進展により、遺伝子をもう一つのツールとする流れも盛んになってきている。この講義シリーズでは、脳が高次生命システムとしてどこまで理解されるようになったかを、三人の講師によって解説する。

 

第10回

6月17日(水)高次生命システムとしての脳-序論 (坂野)

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第11回

7月1日(水)脳高次機能と神経細胞の運動 (河西)

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第12回

7月8日(水)遺伝子・脳・行動 ?決定論的ツールで非決定論的機能を解く (堀田)

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第13回

7月16日(木)マウス嗅覚系を用いて「遺伝子-神経回路-行動」を読み解く (坂野)

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