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2017A-歴史ポスタ

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2017年Aセメスター

文化資源、文化遺産、世界遺産

コーディネータ  中村雄祐(文学部)
ナビゲータ  松田 陽(文学部)
  • 地域/国際
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我々が世界で何かに出会って驚くとき、我々はその対象に驚くのと同時に、実は、自分のものの見方が変わったことにも驚いている。こうしてあらわれてくるものを、我々は文化資源と呼ぶことにする。このような文化資源が何らかのきっかけで周知され、そこに相当数の人々が共感や郷愁やエキゾチシズムをおぼえた時、それは文化遺産となる。こうして生まれた文化遺産を、人々はさまざまなかたちで使おうとする。この過程で特殊な条件が揃い、かつ政治的に大きな判断がなされたとき、それは世界遺産となる。

以上に示したプロセスを定式化することはできない。だが視点を変えて、文化資源、文化遺産、世界遺産を通して人々がいったい何をしているのかについては、我々は明らかにすることができる。ここから現代社会が過去とどう付き合っているかが少しは見えてくるだろう。

文化資源、文化遺産、世界遺産は、いずれも我々が現在頻繁に見聞きする言葉であるが、それらが社会で広く使われるようになったのは最近のことである。本講義では、文化資源、文化遺産、世界遺産という考え方がどのようにして社会に受け容れられていったのかを明らかにし、今日、これらの考え方に導かれながら、我々がどのような活動を行い、何を達成しようとしているのかを、多分野横断的に検討する。

文化資源、文化遺産、世界遺産とは何か

文化を資源化するという発想

松田 陽(文学部)

文化資源、文化遺産、世界遺産という言葉が広く使われるようになったのは、20世紀後半、より厳密に言えば1970年代以降のことである。なぜ人間社会はこれらの言葉を必要とし、積極的に使うようになったのだろうか。また、それらの言葉を使ってさまざまな表現、活動、事業を行う中で、何を実現し、何を実現してこなかったのだろうか。初回の講義では、文化資源、文化遺産、世界遺産という言葉の使われ方を分析しながら、現代社会が過去の資源や遺産とどのように向き合ってきたのか、そして今日どう向き合おうとしているのかを考える。第2回の講義では、文化を資源化するという発想がどこから出てきたのか、そして文化は資源化されることによってどう変化するのかを検討する。

近くても遠い場所へ―文化資源の発見

木下直之(文学部)

東日本大震災からの復興に祭礼が大きな力を発揮した。これは、それぞれの被災地に伝承されてきた祭礼が地域の文化的アイデンティティの核であるとともに、危機的状況に対応する可変性を備えているからだ。祭礼には、それを守ろうとする力と変えようとする力が常に加わる。近代の文化財保護制度が祭礼をどのようにとらえてきたかを概観し、重要文化財・国宝の上位に位置しているかのように受け止められがちなユネスコ無形文化遺産に近年登録された「山・鉾・屋台行事」と、文化財指定とは無縁な場所に展開する東京の神田祭について語りたい。

文化資源の読み書き

文化資源と情報技術の変化

中村雄祐(文学部)

人が文化資源に気づくきっかけは様々である。見たり聴いたりだけでなく、触ったり匂いをかいだり味わったり、あるいはなんとなくということもあるだろう。そんな中、自分が出会った文化資源について深く考え他の人に伝える方法として、読み書きは、決して万能ではないが重要な方法である。この講義では、二回に分けて、文化資源の読み書き、そして、情報技術の変化が及ぼす影響について考える。

三次元デジタル文化資源とサイバー考古学

大石岳史(生産技術研究所)

鎌倉、奈良大仏を始め、アンコールワットなど世界各地の文化遺産を対象とした3次元デジタル化技術と、デジタルデータの解析により新たな知見を得るサイバー考古学の取り組みについて紹介する。さらに、映像技術を利用して実世界に失われた文化財や街並みを仮想復元するバーチャル復元技術を、平城京や飛鳥京を例に挙げながら紹介していく。

文化遺産の復元

松田 陽(文学部)

我々はなぜ文化遺産を復元しようとするのだろうか。さまざまな分野の研究や技術の進化にともなって、今日、世界中で文化遺産の復元が頻繁に行われるようになった。しかし、そうした復元の人類学的な意味やその動機についての社会学的な考察は意外なほどに進んでいない。文化遺産を復元することによって、我々は何を得るのだろうか。またその結果、失われるものはあるのだろうか。さまざまな復元事例を通して、過去を再現するという(厳密な意味では実現不可能な)目的に挑む人間社会の願望を浮き彫りにしたい。

世界人類共通の遺産という考え方

松田 陽(文学部)

1972年のユネスコ「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(通称「世界遺産条約」)は、国家レベルを超えた、世界人類共通の遺産という概念を打ち出した。革命的とも言えるこの遺産概念は、その後、どれほど世界中の人々に受け容れられたのだろうか。世界遺産条約の成立前史、そして条約を実際に運用する過程で見られた世界遺産概念の変容を振り返りながら、改めて問い直したい――人類共通の遺産は存在するのか。

世界遺産の現在―日本からみる

藤井恵介(工学部)

世界遺産は、第二次世界大戦の後、国際的な文化財保護を目的とした、世界的な運動を背景としている。日本は世界遺産条約を1992年に批准し、その後、法隆寺・姫路城をはじめとして、既に20件(文化遺産16件、自然遺産4件)が登録されている。その思想的な背景、制度について述べ、現在の日本における登録の難しさ、課題などについて論じる。

文化遺産・世界遺産を結節する文化資源・陶磁器-東・東南アジア世界遺産と発掘調査成果

堀内秀樹(埋蔵文化財調査室)

「鎖国の時代」と言われていた江戸時代は、日本と東・東南アジアは、文化や経済面で多くの接点を持っていた。講義では、平戸や長崎を通じて活発に行われた文物の流れを当時の貿易品であり、
そうした影響を探る材料としての「文化資源」である陶磁器を取り上げ、現在、文化遺産、世界遺産として認識されている、日本の長崎、平戸、タイのアユタヤ、ベトナムのホイアンなどの遺跡出土様相と日本の文化的特徴について話をしたい。

アンデス文明研究の成果と課題 ①遺跡をめぐって

アンデス文明研究の成果と課題 ②博物館をめぐって

鶴見英成(総合研究博物館)

南米大陸の古代文明「アンデス文明」の研究は、日本では1950年代に東京大学が着手し、裾野を広げながら今も展開されている。ペルーではとくに神殿遺跡の調査を通じて、文明の形成過程の特徴を明らかにしてきた。研究成果とともに調査の歩みを振り返り、地域社会の象徴・開発の障害・観光資源・盗掘の対象など多様な側面を持つ遺跡と、保管・情報発信・交流の場である博物館を切り口として、文化遺産をめぐる諸課題を示す。

21世紀の文化資源、文化遺産、世界遺産

松田 陽(文学部)

これまでの12回の講義を振り返りながら、今日の文化資源、文化遺産、世界遺産の立ち位置、そして今後の展望を総括的に考える。文化資源、文化遺産、世界遺産が大切だということはおそらく間違いない。しかし問題は、それらを使って我々が何をしたいのかである。

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