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2016年Aセメスター

ビッグデータ時代の人工知能学と情報社会のあり方

コーディネータ: 坂井修一(工学部)
ナビゲータ:   中島秀之(情報理工学系研究科)
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近年、人工知能が第三次ブームを迎えたと言われている。火付け役はシンギュラリティの議論(とその映画化)や、ディープラーニング(DL)の成功である。確かにアルファ碁がDLと強化学習を組み合わせた方式で囲碁の世界チャンピオンクラスに勝ったのは(コンピユータ囲碁の研究者にとっても)衝撃的であった。アルファ碁は豊富な棋譜から学んでいる。ビッグデータが容易に入手可能になった現在、DLはこれ以外にも様々な可能性を秘めている。

しかし一方で、DLは人工知能研究(AI)のホンの一部に過ぎない。AIでは従来パターン認識とシンボル処理が二大テーマとなってきた。DLはパターン認識技術として期待されているが、それをより高次の知的活動につなげる必要がある。そこには状況依存性の処理の問題など未解決の問題が山積みになっている。そしてまた、AIは情報技術(IT)の一部(先鋒)に過ぎない。AIはITとして社会に定着する前の非定型な分野を担当している。定式化され、実用化されればITと呼ばれる。例えば、30年前には文字認識はAIの分野であったが、現在では普通に使われている技術である。自動運転も、今でこそAI的要素が強いが、やがてITの一分野になるであろう。ビッグデータの扱いにおいても、現状では理論的に定式化され、アルゴリズムとして形式的に処理できる部分(IT)と、そうではなく中身(データの意味)を扱わねばならない部分(AI)とが混在している。

ITは社会の在り方を根本から大きく変える力を秘めているが、現在それが遍く認識されているわけではない。また、社会システムのデザインは技術だけでできるものではなく、善悪の議論も含めながら社会学や法学とともに歩むべきものである。人工知能・ビッグデータの本格活用時代を迎えて、このことの重要性は高まるばかりである。

そのような訳で、AIブームの今日、未来を見通して社会のあり方までを広く俯瞰しておくことは重要である。本講座ではAIを軸としてITとその社会応用について概観する。AIの全体像を研究の歴史を含めて俯瞰することから始め、ビッグデータの扱いや、ロボティクスなどの関連分野にも触れる。さらにシンギュラリティの議論を含むITの未来像について語り、ITの社会応用や法的問題へと発展させる。

人工知能とは何か ― 過去、現在、未来 ―

AIの歴史概観

記号処理の諸問題と状況依存性

中島秀之(情報理工学系研究科)

近年、人工知能が第三次ブームを迎えたと言われている。この機会に人工知能研究の過去の歴史を振り返っておきたい。黎明期の期待感による第一次ブーム、そ して実用化への期待が高まり消えて行った第二次ブーム、何が起こったのかを明らかにしておきたい。記号処理への期待と挫折、そしてパターン認識への期待と 挫折の歴史を概観する。これらを土台として将来への期待についても述べたい。

ロボット知能の生物的原理

身体性が生み出す知能

行動と認知の創発と発達

國吉康夫(工学部)

実世界で臨機応変に行動する知能ロボットを目指すには、現状の人工知能ではまだまだ限界があります。生物が進化の過程で如何にして知能を獲得してき たかを見れば、身体と環境が重要な要因であり、そこから知能が創発し発達するという新たな原理が浮かびあがります。ロボットを用いた構成論的研究がこれを どう解き明かしつつあるか、また、発達心理学、神経科学、医学など異分野との協働に発展している様子を解説します。

IoTの未来予想図 ~デジタルが経済・産業・社会・地方を変える~

森川博之(工学部)

IoT(モノのインターネット)はすべての産業領域での事業立地や技術開発の「再定義」を促進し、生産性を向上させ新たな価値を創出していく。IoTで社会がどのように変わっていくのか、我々の未来はどうなるのか、データ駆動型経済という視点から明らかにする。

ビッグデータの深層と潮流、スマートデータへ

喜連川優(工学部)

2012年の米国からのビッグデータイニシアティブ以降大きなブームとなった。我が国では2004年に文科省において情報爆発なるプロジェクトを申請し経済省では2007年に情報大航海という同様のプロジェクトが立ち上がり、我が国は世界に先駆けビッグデータが可能とする世界を具体的に描いてきたと言える。ビッグデータとデータアナリティクスとは不可分であり、以前は機械学習と呼んでいたものを最近はAIと呼ぶ場合も多い。サイバーフィジカルシステム、オープンサイエンスも含め ビッグデータをとりまくITの潮流を俯瞰する。

ビッグデータ・AI時代の社会情報学

マシンラーニングの活用による予防医療の進展とライフスタイルの刷新

ビッグデータ・AIの社会展開と課題――第4次産業革命を超えて

須藤修(情報学環)

IoTで取得される膨大なデータの利活用によって、グローバルな産業構造は変化し、都市構造、エネルギー需給、医療の在り方もライフスタイルも変化する。まず私自身が従事してきたマシンラーニングを用いた予防医療の研究(科研特定領域研究「情報爆発」)と地域経済予測の研究(FIRST喜連川プロジェクト)について紹介する。そのうえで、AIを活用したネットワークの深化に伴う社会システムの発展と直面する課題について考察する。

ディープラーニングの可能性

人工知能の未解決問題とディープラーニング

記号とパターンのはざまに

松尾豊(工学部)

ディープラーニングは近年、急速に注目を集めている技術です。ディープラーニングが解決の端緒を開いているのは、表現の学習ですが、それがいかにこれまでの人工知能の壁を突破するものであるかを説明します。同時に、身体性や記号処理との関連を含む、人工知能分野の将来的な発展の可能性についても議論します。

ビッグデータ・AI時代の情報法制

山口いつ子(情報学環)

人工知能やビッグデータ解析等の情報技術の発達に伴い、情報に関する法制度も変容を迫られています。この講義では、特に、今や個人の人となりまでもがネット上でデジタル的に規定されうる状況の中で、個人データの処理がその本人の望まない形で行われた場合に、伝統的に国境で枠付けられてきた法によっていかにコントロールしうるかについて、「忘れられる権利」と検索エンジン事業者の責任をめぐる議論を取り上げながら、考察します。

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